弓道部のアイドル系美少女と僕と韓国人②
🕑 Added 2021-06-30 14:49:01 +0000 UTC
奈緒が弓を引き絞る間も、春人の目は奈緒の一身に注がれている。普段とは打って変わってキリッとした横顔は、欧米人のような掘りの深さと日本人のふっくらした可愛さとが両立していた。まさしく奇跡の横顔だ、と春人は思った。
奈緒が右手で弦を引く。極限まで引っ張られた弦は、奈緒が手を離すと、ブルン!と音を立ててしなった。一連の動作にまったく無駄がない。奈緒はその美しさだけでなく、弓道の腕でも部の中で相当上位になっていた。
「また奈緒ちゃん見てるの?」
背後から声がして振り向くと、そこには桂木亜里沙がいた。亜里沙は春人と幼稚園の頃からの幼馴染で、部活も同じ弓道部に入ったのだ。お互いに腐れ縁だと思っている。
「いや、奈緒ちゃんを見てたっていうか、すごく上達が早いなと思って。俺らが2年の時にあんなに綺麗な姿勢でできてたかなってちょっと思ってたんだよ。別に奈緒ちゃんを見てたわけじゃないんだけどね」
口調が言い訳がましくなっていることに春人は自分でも気づいている。亜里沙のサバサバした物言いの前で言い逃れすることに果たして意味があるのだろうかと春人はいつも考えていた。
「ふーん、まあいいや」
亜里沙はその質問自体にはさほど興味がなかったのか、すぐに話題を転じた。
「ね、今日古文の授業で小テストあった?うちのクラス明日なんだけど、問題見せてくれない?」
「またかよ……。毎回それやってたんじゃ小テストの意味ないだろ」
「そんな真面目なこと言う人だっけ?良いから見せてよ!」
「しょうがないな。じゃあ部活終わった後、部室棟の前で待ってて」
「ありがとー!」
亜里沙は嬉しそうに去っていく。まったく、と思いながらも亜里沙と話していると春人は不思議と癒された。今まで女の子と付き合ったことがなく、女子にそれほど免疫がない春人にとって、亜里沙はなんの気兼ねもなく話せる唯一の女子なのだ。それに、春人は幼馴染だから恋愛感情を抱いたりすることはないが、亜里沙も奈緒に負けず劣らず、なかなかの美人だった。そのため、亜里沙と話していると、春人はよく周りの男子から羨ましがられた。亜里沙は亜里沙で性格に癖があり、それがどことなく他の男子を寄せ付けないオーラを放っているのだ。
「はー、亜里沙ちゃんかわいいなぁ」
春人の横で、春人と同じクラスの佐々木がため息混じりに言った。
「お前、今度亜里沙ちゃんと3人でどっか遊びに行くイベント企画してくれよ」
「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ。亜里沙と遊びに行きたいんだったら自分で誘えよ」
「誘えるわけないだろ?あんな高嶺の花。直接誘うにはハードルが高すぎる。まずは幼馴染のお前をクッションにして徐々に仲良くなっていく計画なんだよ。『あれ?春人の友達の佐々木くん、こんなに素敵な人なのにどうして今まで気づかなかったんだろう』亜里沙ちゃんがそう思うまでに3回のデートが必要だな。逆に3回セットしてくれれば俺はもうお前に土下座でもなんでもしよう」
「はあ、お前は幸せそうで羨ましいよ」
佐々木は調子のいいキャラで憎めないところがあると春人は常々思っていた。春人自身も、佐々木と亜里沙が付き合えばお似合いなのに、と思いながらもその手助けを積極的に行おうとはしない。こういうのは外野が無理に頑張ったりせず、自然の成り行きで付き合うのが、その後のことを考えても一番幸せなのだ、と春人は思っていた。
部活が終わり、春人は部室棟の前で亜里沙を待った。着替えを終えた亜里沙が階段を降りてくる。
「お待たせー!」
「はい、これが今日の小テスト」
春人は亜里沙にしわくちゃのプリントを渡した。
「なにこれ?なんで今日やった小テストがこんなにしわくちゃになるの?」
「カバンの奥に埋まってたんだよ」
「ちゃんとカバン綺麗にしときなよー。まあいいや、ありがと」
そう言いながら亜里沙は耳にイヤホンをつけた。
「何聴くの?」
「KPOPだよー。春人は知らないでしょ」
「KPOPかぁ。テレビでやってるのは見るけどほとんど聴かないな」
「すっごく良いから絶対に聴いてみて!私が今ハマってるのは……」
亜里沙の語りは止まりそうにない。春人はそれほど興味がなかったが、帰り道中亜里沙のKPOPトークに付き合うことになった。