太る可能性が100%と判定された女子高生の話(1~4まで全部通し)
🕑 Added 2022-11-28 16:49:32 +0000 UTC
学校が終わり、普段と同じ道を歩いて東案下駅に向かっていた時だった。
駅の近くに見慣れない看板が立っている。
『最新技術で太る可能性を調べます!今なら無料!』という変なもの。
「(本当にそんなことが分かるの……?)」
何だか怪しいし、正しく測定できるとも思えない。でも……気になる。
今までそこまで太ったことは無いけど、これからどうなるかは分からないよね。
タダで調べてもらえるならいいかな……
ちょっと入ってみよう。
建物に入ったら白衣を着た男の人がいて、近くには大きな機械が置いてあった。
よく分からないけどすごく高そうで精密そうな装置に見える。
「すみません……あの……太る可能性が分かるって、書いてあって……」
私はちょっと怖がりつつも白衣の男性に声を掛けた。
「分かりました。それではまずこの水を飲んでください」という返事が返ってくる。
「水……ですか……?」
「はい、どうぞ」
何で最初に水を出してくれるんだろう……
でも、ちょうど喉が渇いてたから都合が良い。
折角だから遠慮せずに貰おうかな。
「では次にこの綿棒で唾液を採取します」
「あっ、はい……」
この男性にさっと唾液を取られて、それが装置に入れられた。
「しばらくお待ちください。3分ほど掛かります」
「はい……」
装置がガタガタ音を立てて何やらいかにも分析している感じがする。
どんな結果が出るのか気になるなぁ……
3分ぐらい経った後、機械の音が止んだ。
そして男の人から小さな紙を渡された。
これが結果かな?何て書いてあるんだろうと思って読んでみると……
『あなたの太る可能性は100%です』
……という文言が書いてある。
具体的な事は分からないけど、いつか絶対太ってしまうということみたい。
「えっ……そんな100%とかあるんですか……?」
「正確には99.9%以上なのですが、ほぼ100%と言って差し支えありません。
確実に太ります」
「そ、そんなぁ……」
ここまで断言されるなんて思ってなかったからちょっとショック。
でも……そもそもこのテスト自体が本当に信頼できるものか分からない。
この施設が出来たのもつい最近みたいだし、全然信用できないよね。
まあ太るかもしれないけど、ダイエットを頑張ったらいいだけだと思う。
そんなに動揺する事じゃないよ。
「じゃあ……太らないように気を付けます……」
「そうですか。では頑張ってください」
「ありがとうございます」
返事をしてからこの建物を後にした。
結局食べすぎとかに気を付けなさいってことかな?
そんな事ぐらい検査する前から分かってるけど……
まあいいや。早く駅に行こうっと。
そろそろ電車来るんじゃないかな……大丈夫、次の各駅停車までまだ5分ある。
10分間隔だから覚えやすくて助かるよ。
そういや明日からゴールデンウィーク。どこにお出かけしようかな。
なんてことを考えながら改札を通った。
---
今日で5月も終わりで、6月が明日から始まる。
私は来月何しようかなとチョコを食べながら考えていた。
今みたいに休み時間にお菓子を食べることが最近多い気がする……
そう思ってたら智里(ちさと)が近寄って来た。
「よく食べるねー、藍璃(あいり)」
「そう……かな?」
急に言われた言葉に戸惑ってしまう。
今までそんな事を言われたことがないから。
「だってさっきの休み時間もポテチ食べてたし、今もチョコ食べてるよ?
そんなに食べてるのにお昼も普通に食べるんでしょ?」
「そ、そうだね……」
「いい加減いっぱい食べるの止めた方が良いよ。
しかも食べた分が身体に付いてるみたいだし」
ニヤリとした笑みを浮かべながらそう言ってきた。
「本当に?」
身体に付いてる?ということは太ったってこと?
私ってそんなに太ってたかな……?
「嘘、自覚無いの!?
顔だってお肉付いて丸くなってるし、スカートから出てる脚だって結構太くなってるよ。
そろそろ痩せないとマズいと思うけど……」
私の反応にむしろ驚いている智里。
他人がこんなに太ったことに気づいてるというのに、私は何で無自覚だったんだろう……
「分かった……気を付けるね」
「後運動とかした方が良いよ」
運動かぁ……私って動くのとか苦手だからできるかな……
でもした方がいいよね……走ったりしよう……
「じゃあ、明日から運動するよ」
「ダイエット頑張って」
「はい……」
智里から指摘される程に太ったのは恥ずかしい。
今体重何kgぐらいだろう……学校から帰ったら体重測らないと。
家に帰ってから体重を測ると58kgを記録していた。
確か1カ月前まで49kg前後だったはずだから、かなり太ってしまったことになる。
「(何で……?)」
鏡に映った体型も結構ふくよかなものに変化していた。
顔も確かに丸くてプニプニしてるし、脚も結構お肉がついて平均よりも少し細かったのが太めに変わってしまった。
制服の下に隠れていたウエストには贅肉がしっかり付き、おへそ周りもポコッとふくらみが出来ている。
これはマズいなぁ……本当に太ってるよ……
今までもシルエットが大きくなった気がしてたけど、胸が大きくなって着太りしていると勝手に思っていた。
一応胸がふくらんだのは確かで、平均より大きなサイズにはなっている。
でも他の部分もしっかり太ってるから複雑な気分……
制服から私服に着替えてみても何だかキツい。
最近サイズが合わないとは思ってたんだけど気にしないようにしていた。
でもこのスカートだってボタンがちょっと留めにくいし、これはマズいなぁ……
明日からダイエットしないと。
運動して、お菓子も止めて、しっかり痩せよう。
まずはジョギングから始めようかな。
そう思った私は学校のジャージに着替えて、今から家の近所を走ることにした。
これで少しは痩せると思う。後ランニングウェアとかも買っておかないと。
---
7月が始まってから毎日暑くて仕方がない。
少しでも涼しくなりたくて、校内の自販機で買ったサイダーをごくごく飲んでいた。
ついでにビスケットも一口食べる。美味しい。
そんな私を智里が呆れたような目線で見てくる。
「藍璃、運動はどうしたの?」
うっ、その話は止めてほしいな……
「運動……運動……してる、してますよ」
とっさにそう言ったけど本当はどうなのかはバレバレだと思う。
「してないでしょ」
「うぅ……」
やっぱり……誤魔化すことなんてできる訳が無いよね。
智里の言う通り、私は今運動を全くしていない。
5月末から頑張ろうと思ったんだけど、最初の1週間だけで嫌になってしまって……その後は全然。
最後に運動用の服を着たのもいつだっけ……
しかも走ったりしてないのに食欲はもっと増えてるから体重も……
「痩せないとマズいって言ったよね?どうすんの?」
「そんなに……太ってるかな……」
「どう見ても太ってるよ!ほら!」
「ひゃ!?」
いきなり背後に回り、私のお腹の贅肉を掴んできた。
労せずに大量の贅肉を掴めている。
「ちょっとそれは……恥ずかしいよ」
「恥ずかしいのはこの体型だよ。こんなに太って。
顔だって二重顎が出来てて、ふくらはぎも凄くパンパンになってるよ。
いい加減痩せないとデブ街道まっしぐらだと思う」
に、二重顎……そっか、そんなに太ってるんだ……
ふくらはぎも……前は細かったはずなのに……
「それはそうかも……」
私が微かな声で返事すると、智里はため息を付いた。
「はあ……藍璃はほんわかしててかわいいけど、ちょっとは焦ることもしないと。
スカートだってキツくてまともに穿けてないよね?安全ピンで強引に留めてるし、ファスナーは閉まり切ってないし……」
確かにスカートはウエストがキツくてホックが留まらないし、ファスナーも上まで閉まらなくなった。
ブラウスだってパツンパツンだし、無理やり制服を着ていることは否めない。
太り過ぎだとは薄々思ってた。でもわざと事実から目を背けていたんだと思う。
「もう制服が悲鳴を上げてるよ。買い替えるつもりなの?」
「買い替えたくは……無いかな」
制服のサイズアップ……こんなに太ったら当たり前だよね。
でもそんな段階まで来てしまったことに今更だけど衝撃を受けてしまう。
「じゃあ痩せないと」
智里の言う通りだよ……一刻も早く運動を再開して、お菓子もちょっとは控えないと……
このままだと体型がどんどん崩れるよね……
「ダイエットするよ……」
「今回こそは真剣にしてよ」
帰宅後私はすぐに体重計に乗ってみた。
表示された体重は68kgで70kgの大台も迫っている水準。既に肥満と呼ばれても仕方ないレベルになっている。
「(こんなに太るなんて……)」
数字を眺めてテンションが下がっていく。
60kg台でも十分太ってるのに70kgもすぐそこなんて……
そして鏡に映った自分の姿を見てもっと落胆の思いが強くなる。
顔は更に丸くなってパンパンだし、二重顎も出来上がってしまった。
ウエストは贅肉がたっぷり付いてスカートの縁に乗っかってるし、制服越しでも出っ張ってるのが分かってしまう。
おへそ周りなんて脂肪の段が出来る程で括れなんてどこにもない。
お尻だってかなり大きくなって張り出してるし、脚はいっぱいお肉がついてブヨブヨに弛んでいる。
胸はかなり大きくふくらんで制服を引き伸ばすほどだけど、その下のお腹も同じく生地をパツパツにしていた。
私服だって大きいTシャツとかゴムウエストのゆったりしたスカートとかそんなのばっかりになっている。
ファッションには疎いけど、前にも増して「サイズが合えばいい」「ゆったりして着やすかったらいい」という感じになっていた。
これ以上太ったら制服だってビリっとなるかもしれないし、一刻も早く痩せなきゃ……
今日ぐらいは走らないと。まずは前に買ったランニングウェアを着て……あれ……
サイズが合わない……
仕方ないから学校の体操服に着替えて外に出た。
「(はぁ、ひぃ、走るの、しんどい……)」
近所を走ってるけど、もう早速くたびれそう。
足が地面を踏む度に体中のお肉が震えるし、汗びっしょりで気持ち悪い。
大きく育った胸も走るのを妨害してくる上に身体が重くて疲れてしまう。
こんなんじゃ恥ずかしいだけだよ……
近くを歩いている男の人とか、女子高生たちからもクスクスと笑われている気がする。
早く帰りたい……でも走らないと……
今15分は走った感覚だけど……時計を見ようっと。
えっ、まだ7分なの……?
いきなり運動しすぎるのも駄目だよね。今日はこれぐらいにしとこう。
「(すっかりデブになっちゃった……どうして……)」
家に帰った私はまた鏡を見てそう思った。
どう見ても肥満なのは確かだけど、急激に太ったのがどうも腑に落ちない。
春までは特に太ったことも無かったし……
沢山お菓子を食べることが習慣になっているのが原因なんだけど……
自分でも食べ過ぎだと思ってはいる。でも何かが変な気がするなぁ。
あっ、そういえば……
引き出しの中に確か入ってたはず。
『あなたの太る可能性は100%です』
あった、この紙。
太るって書いてたけど本当だったんだ。
疑ってごめんなさい……明日の学校帰りにまた寄らなくちゃ……
---
私は例の場所に行き、中にいた男性に話しかけた。
「太る可能性100%って……本当だったんですね……あはは」
「そうですね。高精度な機械を使っていますから」
こんなことなら最初から真剣に太らないように頑張れば良かったのに、私。
努力してたら太る量も変わっていたかもしれない。
安直に考えていた当時の自分に少し腹が立ってしまう。
でも前の行動を考えても仕方ない。
これから必要なのは元通り痩せること。
そう考えると本当に痩せられるのか気になってきた。
ダメ元で一回聞いてみよう。
「そういや……痩せる可能性って……分かったりしますか?」
「はい、それも測ってますよ。ただし2000円しますが」
測ってるんだ……そんなのも。
折角だから知りたい。2000円は少し高いけど……痩せれるという確証があった方が良いよね。
ただ、痩せられないと書かれてたらどうしよう……
「お願いします」
私は2000円を差し出してそういった。
男の人は受け取った後、またコップを持ってきて渡してくる。
「それではまずこの水を飲んでください」
前も水を出してくれたけど、サービスなのかな。
まあいいや。暑いからすぐ喉渇くし貰っちゃおう。
水を飲んでからまた前みたいに唾液を採取されて……
機械が色々動いて分析している。
凄い技術だよね……誰が作ったんだろう……
4分後に動作が止まり、出て来た紙を渡された。
今回は何て書いてるかな……ドキドキする。
『あなたの痩せる可能性は100%です』
「本当!?」
「はい、正確には99.9%ですが」
「嬉しいです!ありがとうございます!」
良かった!とても嬉しい。
前の太る可能性100%も見事にその通りだったし、今回もきっとそうなると思う。
だからきっと痩せるはず。
今回こそはダイエットも頑張らなくちゃ。
そんな感じで、結果を知ってとてもやる気になってきた。
この夏はちゃんとダイエットしよう。
「頑張って痩せます!」
「はい、頑張ってください」
「じゃあ失礼します」
私は気分が爽快になりながら駅に向かった。
あっ、あと1分だから間に合わない……でもいいか。
---
8月は蒸し暑さが本当に厳しい。
エアコンを付けないとまともに生活できないよ……
もうすぐ9月だけど暑さはまだまだ続きそう。
「(あっつい……しんどい……)」
私は汗ダラダラで学校に向かっている。8月いっぱいまで夏休みならいいのに……
もう暑くて暑くてどうしようも無いし、喉が渇いて辛い。
「(これ飲んじゃおう……)」
近くの自販機でジュースを買って飲みながら歩くことにした。
ついでに鞄に入れたラングドシャも食べよう。3時に食べようと思ってた分だけど……
それにしても……坂道を歩くだけなのにちょっと疲れる……
歩くたびに脂肪がブルブルとはっきり震え、脚もお肉がたぷたぷ揺れてしまう。
お腹もボヨボヨ制服の下で震えてるし、胸も大きすぎて重たいよ……
前までは走った時に贅肉が揺れるのが大変だったけど……今では普通に歩くだけでもこの様。
こんな感じで私は凄く太っていた。もう肥満体型そのもの。
制服は当然入る訳が無く、夏休み中に買い替えたけどそれでもちょっとキツいぐらい。
暑さと身体の重たさに耐えてやっと高校にたどり着き、教室に入った。
「藍璃、おはよう」
「おはよう……」
智里にもかなり低いテンションで挨拶してしまう。
もう暑いし怠いし嫌になってきた。
エアコンのおかげで教室は涼しい。みんなにとっては。
でも太った私にとっては少し暑く感じる。
だからこの暑さを忘れるためにお菓子を食べるしかない。
そんな感じでバクバクと色々口にしている私を、智里が心配そうな顔で見つめている。
「藍璃……まだ1時間目の休み時間だよ?」
「でも、お腹が……!お腹が、空いちゃって……」
学校でも休み時間毎にチョコだったりポテチだったり常に何か食べてる状態。
授業の間我慢するのが限界でお腹が常に減っている。
私はもうクラスメイトの目なんて気にすることも無く、ひたすらお菓子に手を伸ばしていた。
当然ジュースやコーラもよく飲んでいる。
今もチョコ付きポテチの袋を開けて、素早くポテチを掴んでは口に運んでいる。
その動作のたびに二の腕がプルプル揺れてるけど、そんなことは気にしない。
チョコの甘さとポテチのうす塩味の両方が舌に伝わってくる。
こんないかにも太りそうな食べ物がとても美味しくて、美味しくて……
もっと食べたい。お腹いっぱいになるまで。
もう空になってしまった。じゃあ次はどれにしよう……
「藍璃?」
「ち、智里……ごめん……」
あまりに食べるのに夢中になってたみたい。
「美味しいから……!仕方ないの……」
「あはは……そっか……」
智里は苦笑いを浮かべていた。
そりゃこんなにお菓子を必死に食べてたらドン引きだよね……私だっておかしいと思ってはいるけど……
「ダイエットは……してないよね……あはは」
呆れると言うか諦めの表情をしている智里。
何を言っても無駄だと思っているのか、どう感じているのかは分からない。
「痩せたいんだけど……食べたい気持ちが抑えられなくて……」
「ちょっとは抑えた方がいいよ……もう遅すぎる気がするけど。
全身どこ見てもお肉で溢れてるし、凄く柔らかそう……触ってもいい?」
「別にいいよ」
私がそう言ってから、智里はお腹とか二の腕とか、ほっぺとかを触ってきた。
「うわぁ……柔らかい……」
「そうでしょ?」
自慢気にそう言う私。
何も名誉な事じゃないしむしろ不名誉なんだけど……
「せめて週末ぐらいはジョギングした方が良いって。
これ以上は太らないで欲しいから」
「分かった……」
もうダイエットして痩せたらとかそんなことも言われないのが悲しくなってくる……
せいぜい現状維持をするぐらいしか期待されていない。
学校から帰って久々に体重計に乗ると84kgという凄い数字だった。
60kg台の頃の写真が細く感じるぐらいになり、見た目も完全に肥満体型になっている。
「(もうデブと言うか何というか……)」
鏡の中の私もとんでもない姿になっていた。
顔は二重顎で首が隠れるほどで、真ん丸でほっぺがかなりふくれている。
おへそ周りはデプッとした段々腹で、スパッツの上には山盛りの贅肉が重たげに乗っていた。
そのスパッツもどっしりしたお尻や贅肉だらけの太ももに引き伸ばされて今にも破けそう。
内股は擦れるし、椅子からはみ出るし、そんな感じで下半身も大変な事になっている。
胸も凄いサイズで制服越しでも主張が強いけど、あまりにも大き過ぎて邪魔で仕方ないよ。
太り過ぎて衣類は何もかもがキツくてサイズが合わない。
下着も困ってしまうし……ブラは胸が締め付けられて苦しいし、ショーツもお尻のサイズに合ってなくて小さい。
どちらも限界で買い替えないといけないけど……これ以上大きなサイズを買う所を誰にも見られたくないよ……
店員さんに測ってもらうのも恥ずかしいから……
私服も下着も既に何回も替えててこれ以上サイズアップするのは気が引ける。
……何でこんなことで躊躇してるんだろう私。お菓子を馬鹿みたいに食べる方にブレーキを掛けるべきだよね。
普段穿いてるスカートもファスナーが全然閉まらないし、安全ピン2つで本当に強引に穿いている。
そのスカートからはブヨブヨになった極太の太ももが顔を出していて、だらしなくて恥ずかしい。
Tシャツだって胸とかお腹の部分が引き伸ばされてるし……
油断したらおへそ周りがはみ出そうになる。
「(こんなに太るなんて……何で痩せれないんだろう……)」
ここ最近は凄い食欲で食べまくっている状態。
このままじゃ90kg、いや100kgまでブクブク太る一方だと思う。
ダイエットしなくちゃいけないのは分かってるのに……
私って痩せることができない体質なんじゃ……
……そういや、前確か2000円払って痩せるかどうか判定してもらったような。
その時100%痩せるって紙貰ったよね。
引き出しに……あった。
『あなたの痩せる可能性は100%です』
そう書いてあるけど……でも全然痩せてないし、むしろ激太りしてるんだけど……
本当にどうなってるの?太るのが100%はその通りだったのに……
もしかしてデタラメなんじゃ。
真相を確かめるためにもあの場所にまた寄らないと……
---
私はあの建物に入り、そして白衣の男性に話しかける。
「全然痩せなかったですよ!どこが痩せる可能性100%なんですか!」
普段とはかなり違うトーンで、声を張り上げるように言ってみた。
「ちょっと!落ち着いてください!」
流石にこの人も狼狽した感じになっている。いきなりだからびっくりしたのかも。
「は、はい……」
私も一旦冷静になろうとしてみる。
……大きな声を出すのは性格に合わないかも。
「まず知っていただきたい点ですが、『痩せる可能性100%』という表記をするぐらいですから、我々は自らの技術に自信があります」
「でも全然……痩せてませんよ……?」
威勢のいい言葉だけど私は痩せるどころかすごく太っている。
100%と断言する割に真逆の結果になった。
「それで、お客様も痩せた時期があったはずなのですが……」
「痩せた時期……?」
そんな期間あったっけ。
確か8月は太る一方で全然痩せてなんかいない。
体重計はあんまり乗ってなかったけど痩せたことなんて無かったと思う。
だったら7月……?
あの頃は体重計に小まめに乗っていた気がする。
確か……7月上旬は一番軽かったころで65kg。
そこからはひたすら増え続けてるけど。
……そういや7月の初めごろは68kgだったよね。
確かに3kg位は減った時期もあったってこと……?
「言われてみたら、7月の初め頃に……3kg痩せた時期があったような……」
私がそう言った瞬間、男の人は口を大きく開いた。
「それです!あの機械はとても高精度ですから、少し痩せることも予測できるんですよ」
「アリですか……!?そんなの……!」
この人の言っていることは間違ってると思う。
そんなの痩せた内に入らない。しかもその後20kg近く太ってるし。
「そもそも高精度だったら、どれ位痩せるか、いつ痩せるかぐらい分からないんですか?」
私がそう質問すると、この人は考えているような仕草をしてから何か言いだした。
「現時点ではどれ位体重が変わるか、いつ変わるかを予測することは依然として難易度が高いです。
今後、関連会社の開発するエッジAIシステムや登場するであろうオングストローム単位の微細な製造プロセスを使用したシリコン……」
そして、急に専門用語で捲し立ててきた。
きっと私に反論させたくないんだと思う。
賢そうだし何か言っても言いくるめられるだけかな……
「……という訳で、現状ではそこまでの測定ができません。ご理解いただけましたでしょうか」
「はい……」
何と言うか、話を聞いてるのも疲れてきたからもう帰ろう。
どうせ何言っても太った事実に変わりはない。
「ただし、前回詳しく説明はしませんでしたが……特別にお教えします」
「えっ?」
急に白衣の男性が声を小さくしてそんな事を言ってきた。
何の話かな……?
「計測したデータによると、お客様の体重は今日あたりがピークでその後減少に転じる可能性が85%です」
「……そうですか」
本当なら嬉しい話だけど……こんなことを今更言われても全然信じられない。
そもそも最初から言ってくれたらいいのに。
「何で最初から……言わなかったんですか?」
「まだ試験中の技術でして……それでです」
「分かりました……」
これ以上言っても仕方ない。この人に勝つのは無理だと思う。
今日がピークで、明日から痩せる……頭の片隅ぐらいには置いておこうかな。
全く信用はできないけど、「これからも太り続けて100kgになります」と言われるよりは良い。
「じゃあ……失礼します」
「ありがとうございました」
私は建物から出て、全然モヤモヤが晴れないまま駅に向かう。
空を見上げると厚い雲に覆われていた。私も分厚い脂肪に……
夏って急に天気が変わることがあるから面倒だよね。
時刻表を見ると次の準急まで後3分ぐらい。
今から早歩きで行けば十分間に合う……いやこの身体だと無理かも。
こんなに暑いのにもっと暑苦しくなって、しかも間に合わないなら馬鹿みたいだよね。
だったら後で来る各駅停車に乗った方がいいかな。どうせ大して時間も変わらないし。
私はとぼとぼ歩いて東案下駅まで向かった。
駅に着いたけど、改札を通ってから階段を上らないといけない。
エスカレーター、今日は点検で止まってるから……
「(はぁ……はぁ……何で階段ぐらいでちょっと呼吸が乱れてるの……)」
階段を上る度に太もも同士が擦れるし、胸が動くのを邪魔してきて……
お腹も震えて何だか気分が憂鬱になる。
ホームまでやって来たら、準急のドアがちょうど閉まった。
ちょっと走ったら間に合ってたかな……はぁ……
別に急いでないからいいや……
『まもなく4番線に、京橋行き各駅停車が6両編成で参ります』
……もう来た。すぐ来て良かったよ。
さてと、席に座ろう。
あっ、あの場所開いてる。ちょっと狭いけどそこにしようっと。
「お邪魔します……」
小声で一声かけてから座っ……
……あれ、狭いなぁ。
お尻も上半身もスペースが足りなくて上手く座れない。
すると隣にいる女性と男性がスペースを開けようと少し違う方向に寄ってくれた。
でも……狭すぎたみたいで女性が立ってどこかに行ってしまって。
おかげで一気にスペースが開いて、窮屈だったのが楽になった。
……前までこれ位の隙間なら難なく座れてたのに。
すごく恥ずかしい。本当に痩せなきゃ電車でも迷惑をかけちゃうよ……
これからは真剣にダイエットしないと……
---
そろそろ11月でやっと過ごしやすい気候になってきた。
そして運動もしやすいダイエット日和が続いている。
でも……中々痩せないんだよね。
「はぁ、ふぅ、はぁ……」
「頑張ろう、藍璃!」
「うん……」
放課後、智里と一緒に校庭の周りを走ったりしてるけど……やっぱり身体が重い。
贅肉がたぷたぷ揺れ、太ももが擦れ、胸が邪魔してくるのが辛い。
それでも一応続けてはいる。でも雀の涙程度しか脂肪を燃やせていないと思う。
ちなみに隣を走っている智里も実は少し太ってきている。
どうも私が美味しそうにお菓子を食べるのを見過ぎて食欲が増えたらしい。
ウエストにも贅肉が付いてちょっと弛んだ体型になっている。
だからダイエットに協力すると言うよりは一緒にダイエットするという感じ。
でも……私なんかよりもずっと痩せてるし、服を着てたら大して分からないレベルだけど。
当然向こうの方が走るのはずっと早く、息切れすることも無い。
私のペースに合わせてるから智里のダイエットにはなってない気がするよ。
運動が終わってから、私たちは体操服から制服に着替えた。
「藍璃、今何kgあるの?」
「81kg……これでも前よりは3kg減ってるから……」
「良かったね、少しづつ減ってて。
私はうっかり食べ過ぎてダイエット中なのに2kg太っちゃった」
「元が大して太ってないから……大丈夫だよ」
確かにダイエット中に2kg太るのは問題だけど……
今の私よりも20kg以上軽いんだから別に気にするほどじゃないと思う。
実際着替えている際に見た時もウエストの括れはあったし、ちょっとおへそ周りにお肉が付いてる程度でしかない。
二の腕がプニプニしてるのを気にしてるみたいだけど、私なんてブヨブヨに弛み切ってるから。
あの白衣の男性が「今日体重がピークでそのあと減少する」って言ってたけど、まあ正しかった。
高精度?らしいから、あの機械は。
でも減り方はゆっくりしたもので、2カ月で3kg減っただけ。
こんなものかもしれないけど……体重が35kgも増えちゃってるから……
元の体型に戻るにはこのペースだと2年は掛かりそう。
それにしても……走ってる時の私はみっともないよね……
隣にいる智里は普通に走ってるのに、私は呼吸が乱れてて、汗をたくさんかいてるし……
体操服はきつくてパツパツで、脂肪が盛大に揺れて何とも情けない。
こんなダイエットも嫌になってくる。けど諦めたら100kgまで一直線。
あの時……『あなたの太る可能性は100%です』って紙を貰った時に……
本当に真面目に考えてたら良かった。
終わりの見えないダイエットにため息しか出ない。
「藍璃、大丈夫?」
「ごめん……智里、大丈夫だから……」
暗い顔をし過ぎたのかも。心配されてしまった。
「一緒に頑張ろうよ、ダイエット」
「ありがとう……」
この子みたいな友達がいてくれて良かったよ。
ただ、きっと智里の方がすぐに元の体型に戻れると思うけど。
私は学校帰りにまた例の施設の前に来た。
特に誰もいないだろうな、と思って中を覗くと一人の女子高生がいる。
「(一体どうしたんだろう……)」
そう思って中に入って見たら……
女子高生が白衣の男性に詰め寄っている。
「あなたはこの街の女子たちに太る液体を飲ませたそうですね?」
「そんな事実はありません……」
目線を逸らしながら白衣の人は言う。
でもこの女子高生は言葉を続けようとする。
「いいや、証拠は揃ってますよ!しらを切らないでください!」
「そ、それは……」
……あれ、もしかして。
私が太ったのも……?
「すみません……」
「な、何ですかこんな時に!」
男性の言うことを無視して、その女子高生に話しかけてみる。
「その話って……本当なんですか……?」
「そうです!あなたも被害者?」
「えっと……多分……」
私がそう言うと、白衣の人がうなだれた。
そして女子高生の方を向いてゆっくり口を開く。
「……もう観念するしかありませんね。私がやりました。
これもテクノロジーの発展に必要不可欠なのですが……やり方がまずかった」
「認めましたね。ではまずこの子に謝りなさい」
「実は測定前、特殊な水を飲ませて体質を変えていました。だからあんな結果になったんです。
太るに決まってるのです。勝手なことをして、申し訳ない……」
「えっと……そうなんですか……?」
「はい……機械の精度自体は確かなのですが……お客様の食欲のブレーキをちょっと弄りまして……」
「そんなこと……できるんですね……」
何だか話が急展開でよく分からない。
でも、この人が私を太るように仕組んだらしいことは分かる。
本当だったら最悪。ただ、この白衣の人自体はそこまで悪意があるようには見えない。
今怒りをぶつけるよりも……
「だったら……痩せる水でも飲ませてください!」
「できます!それも開発してます!だから今回は見逃してください!どうか!」
深々と頭を下げる男性。
そしてその様子を訝しそうに眺めている女子高生。
その両者の近くに置かれている謎の機械。
異様な空間だった。
「分かりました……元に戻れるなら……許します」
「……こんないい子で良かったですね、全く!
他に後何人にこんなことをしたんですか?」
「2人にも似たようなことを……連絡先は分かります。万一の時に控えていますから」
「すぐに連絡して謝罪しに行きなさい、あと痩せる水も持って来るように!」
「はい……取りに行きます……」
そう言ってから、白衣の人は奥にある棚まで行った。
「ありがとうございます……」
「いえいえ!全然礼には及びませんよ!」
ところで、この人は誰なんだろう?
大人の男性相手にもかなり強気で、しかも証拠も揃えてるとか言ってたし……
「何者なんですか?」
「私?私は函伊綾音と言います。あなたの名前は?」
「豊佐藍璃(とよさ あいり)です……」
「私は単なる女子高生ですよ。藍璃さんと同じ」
「そうですか……」
年齢は多分あまり変わらないのに、とてもしっかりしている。
それに雰囲気もただ物ではない感じ。
そんなことを思ってたら白衣の人が戻って来た。
「これが食欲を抑え、脂肪を消費しやすくして痩せさせる水です。
今飲むだけで体質がすぐに変わります!」
差し出された水を私はすぐに飲んだ。
「……ありがとう……ございます」
私たちは全員、建物から出た。
「じゃあ、次また会う日まで!お元気で!」
「はい、お元気で」
綾音さんはそう言ってから、白衣の人の傍に行く。
「今日はずっと見張っておきますからね!早く次に行きなさい!」
「はいっ!」
男の人が女子高生にビクビクしている様子を見ると、何だか面白い。
結局綾音さんの正体は分からなかったけど、とにかくこれで良かった……のかな。
---
結局私は痩せる水を飲んでから、2カ月もしない内に一気に痩せた。びっくりするぐらい急激に。
54kgまで減っていて、あとちょっとで前の体型に戻れる程。
『痩せる可能性が100%』というのも、ある意味合ってたのかな。
「智里、一緒にダイエット頑張ろう!」
「そうだね!」
今日も放課後、二人で一緒に走ることにしたのだった。
……そういや智里、何だか先月よりも太ってる気がするような?まあいいや。