いろいろなバキュームベッド、集めました
🕑 Added 2024-06-23 13:36:30 +0000 UTC
「また大規模なことになってるねぇ」
「そのくらいの方が納得感はあるけどね」
「さすがはボクたちが惚れたミスト・スランバーだねー」
ボクたちはこの日、二つあるバイト先のうち後から雇われた方に呼ばれてとある場所に来ていた。
所在地は都内の某展示場。特に絵画系のイベント展覧会がよく行われるところだ。あれこれやりたいからとガラスケースの展示エリアを必要としたいつぞやのSM博物館とは、期待感は似ていても場所は全くの別。
ここでは今日と明日の夜間、ミスト・スランバーによってある展示イベントが行われる。ボクたちは不定期テスターとして所属しているそっちに呼ばれて、貸し切っているフロアロビーではそろそろ受付準備が始まったくらいの頃合に展示エリアの入口にいた。
手にはカメラ、着ているのは飾りのないハイレグのエナメルレオタード。ボクたちは今回、ここで展示の案内ムービーを担当することになっていた。
「というわけで、今回はボクたちシロとクロが、この『バキュームベッド展示体験会』の紹介をしていきますっ」
「現在は配信形式となりますが、展示終了後はアーカイブを削除し編集した上で再投稿させていただきます。ご了承ください」
これはアダルトグッズ、特にボンデージグッズの大手メーカーであるミスト・スランバーが主催する、成人向けの展示会だ。過去の類似イベントは会員限定だったり、SM全般を取り扱うために外部のイベント会社の力を借りたりしていたけど、今回は一般開放もされていつつ自社での開催に漕ぎ着けた。
会員限定だったよりディープなイベントをきっかけにミスト・スランバーと巡り会ったボクたちに言わせれば、どれも一長一短だから使いようだと思う。今回はこうできた、くらいだ。
では何をメインにするのかというと、バキュームベッドだ。マニア向けの全身拘束具の一種で、主にラバー製の薄い膜の間に体を入れてから中の空気を吸い出すことで、膜の可動域と気圧によって身動きを封じる。
昨今はバリエーションも増えてきて知名度も少しずつ上がってきているのだけど……ちょっと問題もあった。それが適切でないプレイ方法などによる事故の発生、それに伴うイメージ低下だ。たまに布団圧縮袋なんかで似た行為が行われることもあるけど、それによって窒息事故が起こる度にどうしてもレッテルを貼られる。とはいえ事実危険ではあるから、やり方はしっかりしないといけないプレイなのだ。
それもあってか、今回は呼吸制御に類するプレイは一切行わない。それはそれでボクたちは楽しめるけど、あくまで外向けのプレビューを兼ねる以上は仕方ない。
加えて、ミスト・スランバー的には当然だけど安全な自社製品の販促も兼ねている。会員サイト以外のアダルト映像サービスにも配信や動画を残し、会員サイト内でも登録なしで見られるように設定するのはこのあたりが関連しているらしい。
「というわけで、さっそく見ていきましょう」
「まずは……普通の、一番よく見るタイプのバキュームベッドですね! 四角いフレームを覆うように二枚のラバーシートが張られているやつ」
これは展示会だから順路にそってじっくり見られるように設置されている。たとえばこの最初のエリアは、通路右側はバキュームベッドが壁に掛けられていて額縁のようになっている。
もちろんこれら全てに人が入っていて、呼吸音や呻き声を出したり、ぎちぎちと音を立てながら楽しんでいる。バキュームベッドごと壁に吊るされるなんて簡単にはできないから、多少慣れている子でも飽きずに楽しめるはずだ。
「こんなふうに隙間に入れられて空気を抜かれるだけで、本当に動けなくなってしまいます。どのくらい動けないのか、ちょっと試してみましょう」
「展示物には撮影やお触りの可否が添えられてるので、しっかり確認してその通りに扱ってくださいねー。……あ、この子触れるよ」
通路の反対側へ振り向くと、こちらは寝かされた状態で設置されているバキュームベッドたちが並んでいる。床に柔らかいマットレスが敷かれた上に置かれているから、背中側も痛くはならないだろう。
そして壁掛け側もそうだけど、ひとつひとつにマークと注意書きが並んだ看板が用意されている。そのうち「呼吸経路を塞がないでください」や「硬いものや鋭いものを当てたり引っ掻いたりしないでください」という当たり前のものは全てに共通して書かれている。
違うのはそれら以外だ。「触らないでください」とあるものが半数以上ではあるけど、「係員の指示のもと優しくお触りください」に置き換わっているものがあったりする。ボクたちはそれを見つけて、この通路一体を見ていた係員を呼びながら展示物の脇に陣取った。展示品ナンバーは……3番ちゃんだ。
「ちょっと触ってみると……」
「んぅーっ!? ふっ、んぅ」
「こんな感じで。おそらくしっかり悶えているところですが、ほぼ全く身動きが取れないのがわかるでしょうか?」
ラバーでつるりとした細いお腹を掌で撫でてあげると、驚いたような反応をしながら逃れようともがく3番ちゃん。しかし枠を少し持ち上げたり体がわずかに浮いたりするくらいで、可動域は前後にちょっとだけ。左右への動作や姿勢の変更は一切できていない。
完全に密着して自然な状態より猶予のなくなったラバーシートを、気圧の影響で完全に連動した外枠が固定しているのだ。密着した部位とシートその部分から離れなくなるからもちろんシート自体にも拘束力はあるけど、このタイプのバキュームベッドを完全拘束たらしめているのは枠のほう。
こうなっていると中にいる人はシートのわずかな可動域以外では、硬い枠ごと動くことしかてきなくなる。しかし関節まで開かないように固定されている状態で、体をすっぽり覆う枠ごと動くことなんてほとんどできない。
「このように、体の大部分がシート越しとはいえ開かれた姿勢で固定され、より恥ずかしい姿勢や見せつけるような形で拘束できてしまうのがバキュームベッドの魅力のひとつです」
「膜越しにしかならない点は難点でもありますけど、ぴっちり張り付いていることで 肌はとても敏感になるんです。こんなふうに」
「んふぅっ!?」
せっかく触ったから、この子にはもう少しだけ見本になってもらおう。ある程度持ち場は選べるようになっていると聞いたから、お触り可の中で一番手前にいる以上は覚悟もしているはずだし。
上下に震えている赤いラバー越しの体をじっくり撫でてあげると、面白いほど反応して跳ねた。頭まで覆われて目隠し耳栓状態なのも、完全拘束で動けない分さらに敏感なのもあるだろうけど、それにしてもただ性感帯でもない場所を撫でただけとは思えない反応だ。
ラバーシートを持ち上げるほど乳首が勃起しているのも、横から映してあげるとわかりやすい。その突起を指先で弄ってあげれば、余計に反応してすっかり喘いでいる。
ちなみに……お触り可の看板がある子は、もうひとつアイコンが用意されている。ローターや電マの絵に、玩具使用不可の子は斜線が引かれているんだけど……この子の注意書きにはそれがない。
「このアイコンをご確認の上であれば、玩具の貸し出しも行っております。欲しがっている悪い子には、ちょっとしたご褒美をあげてもいいかもしれませんね」
「消耗していたら係員が止めますから、ご遠慮なく……ふふ、欲しい? じゃああげるねー」
「んっ…………ぅ、ん~~~~~~ッ!!」
呼ぶまでもなく用意してくれていたローターのスイッチを入れて、弱振動で下腹部に当ててやる。すぐに理解して身構えるような仕草をしたから、お望み通りそれをお股に当ててあげた。だいたいのクリトリスの位置を探り当てて、その上から優しく。……普段よりしっかり刺激が強いから、少しずつやってあげた方がいい。
すると3番ちゃんは少しの間必死に悶えてから派手に腰を跳ね上がらせた。絶頂してしまったようだから、ローターを離して代わりに撫でる。……このあたりは普通と同じだ。バキュームベッドという道具を使っているだけで、あくまで人間同士の拘束プレイなのだから当然だ。今回は展示品になっている特殊な状況で、中にはより深いプレイの中にいる子もいるとはいえ。
びくびくと跳ねながら少しずつ落ち着いて快楽の余韻に浸る様は、それがえっちな行為だと突きつけるよう。展示物は肌が見えないプレイだけど、このエロティックはきっと伝わることだろう。
係員はローターを受け取ると……3番の注意書きの一部を捲って「お触り不可」に切り替えた。代わりに6番を「お触り可・玩具不可」に変えて、元の場所に戻っていく。……負担を分散し休憩時間を作って、少しでも楽に気持ちよくするための仕組みだ。
実は今回、展示物の大半が外部の希望者なのだ。展示物側も楽しませてこその展示会ということだった。
さて。触り方は紹介したけど、展示方法のほうがまだだった。
「このように、展示物たちは様々な様子で設置されています。一口にバキュームベッドといっても、この意外なほどの自由度の高さも魅力のひとつです」
「いくつか見てみましょう! たとえばこの1番は、黒ラバーでがに股にされて寝かされています。頭まで覆われて呼吸はチューブ越し、特によく見るパターンかもしれませんね」
「2番は緑色で、脚を伸ばした上で口元はそのままただの穴になっています。1番よりは緩そうに見えますが、これでもかなり厳重なのがこの器具の魅力です。それに、地に足は着いていません」
「こっちは3番、目を引くM字開脚ですね! こんな姿勢でもしっかり固定できて、絶妙な無様さも演出できたりするんです」
このあたりはオーソドックスなバキュームベッドを素直に使ったものしかないけれど、それでも全く同じものがないほどバリエーション豊かだった。もちろん寝かされているか掛けられているかもあるけど、それ以外にも。
たとえば色。光沢のある黒はもちろん、赤や青、緑や黄色、果ては白なんてものまで。好きな色を選ぶことができるし、色や明るさ、光沢の有無などでけっこう雰囲気や見え方は変わってくる。
頭の処理もいくつか種類が用意されている。大きく分けると外に出ているか包まれているかの二つで、前者なら頭を出す穴が辺にあるか面にあるか。後者なら呼吸孔が直に空いていたり、チューブ越しになって極限まで外と隔絶されていたりする。特に壁掛けのチューブからは、時々涎が垂れてしまうことも。
「吊るしても問題のない金具が必要で普段はハードルが高いですが、やはり壁掛けのほうが無様感が出るかもしれませんね。……こちらの4番は、絵画用の額縁の中に嵌め込まれています」
「額縁と画題のアクセサリーは特に強いかも。全体的にそういう需要の器具ではありますけど、すっかりモノになっちゃいたい人にはオススメの装飾です」
次の通路へ。ここはより美術品的なニュアンスの強い展示になっている。大半が左右ともに壁掛けで、その多くが額縁つきだ。画題には……「メイド」や「競泳水着」など、中には「魔法少女」のように特定のキャラクターを示唆するものも。
違いは一目でわかるだろう。
「こちらは透明ラバーエリアですね。衣装やコスプレをしながら封入されて、より作品らしくなっているものもあります」
「中身が見えてしまう透明度の高いものもあるので、こんな形で使ったりもできるんです」
わざわざこちらを選んで、しかもおめかしまでして入っているわけだから、当然見られたい人が多い区画だ。ひとつずつじっくり、カメラも近づけながら鑑賞してしまおう。
とはいえ意匠や雰囲気は様々だ。まっすぐの姿勢で文化展示のような趣の制服、平泳ぎの途中を切り取ったような水着、惨めに潰れた姿勢で敗北を現したような変身ヒロインのコスプレ、といったように。
中には着ぐるみ娘も。出した頭に被って、中身は肌タイの上から衣装だったりと、本当にいろいろある。
それこそ、中には裸で透明ラバーに囚われる勇気のある子もいた。一応スルーもしやすい角付近に配置されているのは、さすがに忖度が働いたのかな。二人ほどいるけど、片方は頭だけ全頭マスクだから余計に背徳感があった。
「それ以外の部分は手前と同じですが、こちらも色がいくつかありますね。うっすら青かったり、飴色だったり……無色透明だったり」
「透明だからといって拘束力が弱まったりはしませんので、ご心配なく」
それ以外の違いがあるとすれば、ちゃんとした衣装の子はお触り禁止が多い。裸のうち片方は躊躇なく身を差し出しているし、むしろ汚してこそ完成するとでも言いたげに開いた股を晒す魔法少女レオタードの子もいるけど。
あとは、一部がつけている幅広で平べったいゴーグル。これがあると、頭までバキュームベッドの中でも外が見えるようになる。
「そして次ですが、このコーナーは全員がお触り可のようですね」
「より遊べるよう、いやらしい形で飾られた子達です。これだけお尻を突き出してくれれば、遊べちゃいますよね」
「んぁうっ!?」
さっきの裸に透明の二人は、あれでも一応美術品のほうに扱われていたらしい。次の区画はより卑猥になっていて、近道の形でスルーできる経路も用意されている。
とはいえ、どれも露骨なエロではあるけど見応えはあった。うつ伏せタイプのものに入って寝かされ、黒ラバーのお尻を惜しげもなく突き出してみせる25番は、ご丁寧に「スパンキング可」のアイコンまであった。叩いてみると、嬉しそうなマゾの声。
「先ほどは膜越しが前提といいましたが、こちらは穴も使えてしまうようです。展示会全体の注意事項にもありますが、爪を短くした手でお触りください」
「んっ、ン、っふ、ぅ……ぁ、!」
クロが見つけた19番は、壁際ではなく少し離れたところ、裏側にも人が通れる位置に吊るされたがに股の子。股間部分に薄く小さな袋がついていて、その袋を穴の中に挿入することでラバー穴を使えると。……「性交不可」なんてアイコン、他のものには当然ない。
あんまり物欲しそうだったから前後から指で触ってあげてから、次の20番を見つける。……まだまだ展示物はあるはずなんだけど、本当に多いね。そっちも希望者だから少額とはいえ体験料を取れているとはいえ、よくこれだけの数を用意したものだ。
「なるほど……さっきの14番と15番が向こうだったの、こういうこと」
「皆さん、たくさん触ってあげてくださいね」
中には穴も使えるどころか、特殊な形状でラバーシートにダメージを与えないクスコで穴を拡げて、奥まで密着させている変態さんまで。黒ラバーで中身がバレない展示物まで貶められると、ここまで振り切ってしまう子までいるようだった。
ここまではフレーム枠に囲まれた平面のバキュームベッドを見てきた。それが基本とはいえ、実は他にも種類がある。
「ところで、バキュームベッドには新型が普及しつつあることをご存知でしょうか」
「エアマットタイプですね! より空気が抜けにくく、体の負担も少なくなっています」
既存のもののシェアを全て奪うほどではないにせよ、これは初めて見た時には素直になるほどと思った。
枠がない代わりに、エアマットに張り付けて拘束するタイプだ。エアマットの外側に人が入れる層があって、そこに入った状態で空気を抜く。するとエアマット部分が平たいままになって、フレームに近い役割を果たすのだ。
「収納も楽で、入っている間も背中が柔らかくて、拘束力は似たようなもの……普段使いならこれまでのものよりお勧めかも」
「特別に乗ってみていいそうなので、マットとして使ってみましょう。体格や相手のわからない恐怖感などもあるのでこの場ではお控えいただくことになりますが、もちろんご購入しての使用の際はこのようなことも……柔らかい」
「ぅぐ、っ……」
この21番の子には事前に話を通してあるそうで、中身ごとマット扱いする行為をクロが試しにやってみせることに。人型の上にうつ伏せになると、21番が少し苦しそうに呻いて……すりすりと触ってみせながら、クロがぽろっと零すように一言。たぶんエアマット部分に対して言ったんだろうけど、女の子の体に言ったようにも聞こえるよ、それ。
「ここまでのバキュームベッドは平面、いわば二次元でしたが……」
「これは一次元。バキュームチューブっていいます。……これ、ボクたちもやったことないよね。動画になるからって頼めばやらせてもらえるのかな」
だんだん私欲が出てきたけど、許してほしい。ボクたちは純然たるリバ、つまり半分はマゾだ。これだけいろいろ見せられたら、される側のことも当然想像してしまう。
もちろんサドではなくリバを紹介役にしている理由はあるんだけど、関わったことのないものは当然気になるもので。
バキュームチューブ、名前の通りチューブ状になっている。つまり枠がなくなって筒の形で包み込んでいるわけだ。
姿勢はほぼ固定されるけど、比較的手軽かもしれない。そんなバキュームチューブだけど、大きく分けて二種類あった。
「こういうの、確か前に上がってたスウツでもあったよね」
「ヘビがそうでしたね。ボディサックのような形で体を収めるだけのもので、今回の展示品の中では比較的動ける方です」
「首から爪先までで、入れて空気を抜くだけ。でも肩も股も全く開かないから、転がることしかできない」
ひとつがこの形、どこかに繋がったりしていないもの。首までと頭の上までの二パターンあるけど、爪先のあたりに吸引口が繋がっているのは同じだ。
これは拘束具としては厳重だけど、バキュームベッドの中では可動域が広い。腰や脚を曲げることはできるから、それこそヘビのように這うことくらいはできる。そのせいか、ひとつずつ仕切りの中に閉じ込められていた。
その時のものだろうか、しれっとヘビスウツが混ざっていた。これ、案外人気なんだとか。
「こっちは……なんかコレクション感増すねー」
「実験施設や保管所に並べられているような。数あるうちのひとつとして並びたい方にはお勧めです」
もうひとつがこれ。上下がどちらも機材に繋がっていて、本当にチューブの形から圧縮されている。こちらは立てられているものもあって、研究施設の備品じみたモノ感があった。展示物どころかただの保管物といった趣で、体のラインを晒されながら整列している。加えてこちらの場合、腕を上げたものが混ざっている。
このイベントは一般客も短時間の体験ができることになっているんだけど、そのためなのかまだ入っていないものも並んでいる。バキュームベッドの区画も余りのエリアがかなりあったけど……ねえ、このイベント定員とか大丈夫?
「このように、チューブにも色のバリエーションはあります。形状の都合上、他の部分はパターンが少なめですが……」
「代わりに上下の部分のデザインだったり、柄だったり。ご購入の場合はオーダーメイドがあるので、ぜひご検討を。……あちこち触りやすいのは利点だね、これ」
「ふぅっ……!?」
バキュームベッドはどうしても側面のあたりがシートに阻まれて触りづらいけど、チューブはぐるりと360度触り放題だ。撫でやすいし、くすぐることも。そのせいか、ここのお触り可能品はくすぐりの可否もオプションづけされている。
オールオーケーの子がいたから試しに抱き締めて撫で回してみた。お尻を揉んであげたら気持ちよさそうな反応……これ以上は止まらなくなりそうだから次。
「一次元と二次元があるってことは……」
「三次元もございます。バキュームキューブ、などと呼ばれたりしますね」
フレームが立方体、または直方体になった立体的なものだ。体を開いて見せることは難しくなった代わりに、奥行きと安定性を得ている。
これはミスト・スランバーでは見たことがないかもしれない。というのも、これは意外と応用性が高くなくて。姿勢の自由度も上がると思いきや、余ったシートがまっすぐになろうとする力でどうしても限られるらしい。
「ただ、普通に立った状態で入ることもできます。比較的初心者向けかもしれません」
「ん、っ。はい、私、こういうの初めてなんですけど……無理なくできて、気持ちいいです」
そのせいか、形によっては展示物としての恥ずかしさが控えめだからか……喋って使用感を教えてくれる展示物も。簡単な全頭マスクだけ着けた30番ちゃんは、その一般客に近い感覚や展示の緩さを活かしてこうしてお話や記念撮影を担当してくれるのだとか。……いや、基本的に多くの展示物で撮影は可になっているけど。
これはチューブと打って変わって、ほぼベッド同様のバリエーションがある。さすがに穴がずれてしまうのか、口元が開いて頭まで入れるものだけないけれど。
頭出しの有無、色と柄と透明度……あとはこれ独自なのは、サイズかな。膝立ちなどで入る立方体と、立って入れる縦長の直方体があった。今の子は特に楽な直方体だ。
「ただ、そんなキューブにも上級者はいて……これ、凄いですね」
「できる姿勢の中なら、恥ずかしいのもできるってことだね」
「ふーっ、ふー……ンっ」
33番はなかなか凄まじい格好だった。本来呼吸チューブは手前の面にあるんだけど、前後を逆にして……まんぐり返しの姿勢で収まっている。お触り可の看板の横でこれでもかと突き出している股を遠慮なく撫でてやると、さすがというべきか嬉しそうに反応していた。
……ただ、これにはちょっとだけカラクリがある。それはこの33番がいる、次の通路との角の配置にも関係していた。
次が最後の展示エリアだ。ここにはこれまでに含まれない、ちょっと特殊なものが集まっている。ミスト・スランバーもオーダーメイド限定販売としている、いわば創作バキュームベッドだ。
「あー、ここまで来るとウズウズしてくるね」
「はい。私たちもそろそろ、我慢できなくなってきた頃合です。……次はこちら」
「完全にオブジェ扱いで、外からの責めは度外視。ただ置かれていたい子や、SMバーのような場所やパーティ向けかも?」
試しに作ってみたという、テント型のものだ。正方形の枠が敷かれているところまではベッドと同じなんだけど、ラバーシートが四角錐状になっている。中央に座って、頭を出して吸い付かれる格好だ。
設置すれば動けなくて無様だけど、股は下面になるから弄ってはあげられない。より人間に近い姿勢で飾ることに特化している。
「このへんは箱詰めとの複合? 面白そうだけど……」
「開閉には負担がかかるので、五分に一度のみとさせてくださいませ」
なんとなくボクとクロで分担ができてきたね。普段からサド役で表に出るボクはフランクに感想を、マゾ役を見せるのに慣れているクロは説明と注意を。……じゃなくて。
二つ横に並んでいる。箱の中に丸まって入って、その中でバキュームされているものがひとつ。バキュームがなくても全く動けない中に押し込まれていて、外側はガラス箱になっているからどの角度からでも見放題。そして箱に拘束を一任しているからか、バキュームそのものは袋状だった。呼吸はホースが出ている。
もうひとつは、トランクケースの形で観音開きになっていた。その中でバキュームベッドになっていて、肘と膝を直角にした姿勢で囚われている。このトランクケースが中身ごと開け閉めできて、閉じると手どうし、肘どうし膝どうしと体の前で合わせられる姿勢になると。実現のためにラバーがかなり柔らかくなっていて、しかもすぐに空気が入ってしまうから実用性は微妙だとか。
さて、最後のふたつだ。どちらも試作品にしてはなかなかいい出来と聞いていたけど……なるほど、確かに。
「ヒトイヌとの複合のようです。拘束の部分をバキュームベッドで行いつつラバースーツのようにして、無個性で真っ黒なワンちゃんが出来上がっています」
「空気弁がお尻にあるのもなんだかいいですね、かわいい。尻尾みたい」
「撫でていいそうなので、ぜひ可愛がってあげてください」
言ったままだけど、言うなればバキュームパピーだろうか。ヒトイヌ型ラバースーツによく似た姿だけど、拘束方法にバキュームを採用してみたと。吸引ホースがお尻から機材まで繋がっているのが滑稽で、それとは別に首輪に繋がる紐が金具に留められている。
そもそもドギースーツとの差別化が難しいとのことだけど、ボクは好きだ。本当に可愛いけど……きっとこれから沢山の来場者に撫でてもらえるだろうから、お預けして最後。
「こちらは人間家具の発想ですね。椅子にバキュームベッドを仕込んで、人を座った形で入れています。展示物としては着席はお断りさせていただきますが、許可を受けておりますので見本として」
「……っ、ぅぐ、っふ……!」
「なんというか……背徳感と、嗜虐感がぐっと満たされる感じ。やってることはほとんど、ただ膝に座ってるだけなのに」
うちのパブでも人間家具はやったことがある。ボクたちは木馬になっていたから関わっていないけど、ほかの子がやっていた埋め込み型の椅子と同じ発想だった。
座ってみると……背中から呻き声が聞こえるのが、すごく背徳感を煽ってくる。クロじゃないけど、柔らかいし……。今回はこれだけだけど、オーダーメイドでは余った部分をエアマットのような形で柔らかくすることもできるとか。……いるのかな、これ買う人。
現時点で存在する展示はこれで全て見終えた。だけど、これだけではない。
ボクたちは犬と椅子の間を通り抜けてその奥の部屋へ。表面にラバーシートが緩く張られて、下側にひとつキャスターがついた観音開きの扉が、外されたまま二つ寝かされていた。
「お疲れ様。全部紹介できた?」
「はい。38個、確かに」
「じゃあ……覚悟はできてる?」
「もちろんっ。むしろ、待ちきれなくて!」
そうして、体験コーナーとなる展示会の残り半分の区画で待っていたオリさんのもとへ。同い年とのことで、意気投合もしているから気安いものだ。
だけど……まだ最後の仕上げが残っている。ボクたちはその場で、着ていたエナメルレオタードを脱いで裸になった。
「じゃあ、39番。入って」
「はい」
クロが先に鼓膜保護の耳栓をつけて、体験コーナー入口に寝かされていた扉の片方へ。ついていたラバーシートの内側に潜り込んで手足を伸ばした。
するとその隙間を閉じられてから、吸引器の音がしばらく響く。それが納まった頃には、バキュームベッドでできた扉にはグラマラスでいやらしい体をした女が浮き出ていた。
そう、本当の最後の展示物はこれだ。体験コーナーへ入る時に開く仕切りのドア。体験せずに帰る場合は横の通路から出口に向かうことになるし、これこそが展示物とお客様を分ける境界線となる。
そしてそのドア、39番と40番はボクたちだった。ここまで一緒に見てきた、弄る側にも回っていたボクたちがこれ以上なく無様な扉に貶められることで、人間とバキュームベッドの境界線をかき混ぜつつ分ける。ここから先では、これらと同じように非日常を楽しめるのだと、知らしめることができる。
「40番も。展示品として、扉としてたっぷり楽しむんだよ」
「はいっ。よろしくお願いします……では皆さん、バキュームベッド展示体験会を、楽しんでいってくださいね!」
相方が物言わぬ扉に成り果てるまで持って向けていたカメラをスタッフへ預けて、最後の挨拶をしてからもう片方の扉へ。コードネームに合わせられたのか、ボクが入る方は白ラバーだ。
ボクはクロと違って小さいから、それを活かしつつインパクトで負けないように。内側はマウスピースになっている呼吸チューブに口を合わせて、肘と膝を90度に曲げた無様ながに股になった。ボクとクロはもともと対照的なのが売りだから、こうして何もかも真逆にするのがきっといい。
耳栓をつけているからもうよく聞こえないけど、準備完了を示すために手の甲で軽く扉を二度叩いてから目を閉じる。するとスタッフが入口を閉じてくれて、ほどなく空気が抜けていく風が裸体を撫でた。そのままラバーシートが張り付いてきて……自分がいかに惨めな姿勢をしているか実感させる感触とともに、ボクもぴくりとも動けなくなった。背中側に硬い扉があるから、普通のバキュームベッドよりも動けない。
ずっと見てきて、ずっと欲しかった被虐に浸ることができる。ボクたちはリバだけどけっこう節操がないから、ひたすら様々な展示物たちを見て回りながらサド側に回り続けるのは少しだけ大変でもどかしかった。だけどそうしてマゾ欲を溜めきったから、今から閉場時間まで扉として貶められ続けることを楽しめる。
落ち着いているのを確認する程度の時間が経ってから、扉ごと縦にされた。それから蝶番を付け直されて、閉じた位置に合わせられる。人一人が封入された扉なんて本来なら蝶番では支え切れるか怪しいけど、そのためにキャスターまでついている本気度だ。
左隣にクロの気配がわかった。ボクたちは今、無様なバキュームベッド扉にされて晒されている。そんな39番と40番の近くにお触り可の看板が置かれて、正面から映した絵を最後に配信が終わった。
だから、ちょうど向こうでは展示会が始まった頃だ。予定時刻通りとはいえパブリックビューイングまでしながら待たせていたのは、そこまで含めた展示会というひとつの作品が完成する様を見せるためだ。
ここは一番奥だから、お客様が来るまではもう少しかかるけど……そのときはきっと、ボクたちには一切予測できないままに胸やお腹、股を遠慮なく触りながら扉を開けてくれることだろう。それが楽しみで仕方なかった。