バーコード4
🕑 Added 2021-07-03 12:12:03 +0000 UTC
「……ただいま。」
「お邪魔しまーす。」
何とか説得しようとしたものの、ユウカの訪問を阻止することは出来なかった。
今までだったら力づく止めることも出来たけど、今そんなことをしたら一体何をされるか。
「わー、みっちゃんの部屋久しぶりー。」
「あんまり変なとこ弄ったりしないでよ?」
ユウカはいい子なのは間違いないけど、目に入ったものが気に入るとねだってくることがある。いや、ねだるってだけならまだマシだ。断られるとこっそりと持ち出すこともあって、極力部屋には入れないようにしてた。
もし今、何かが欲しいって言われたら私にそれを断ることは出来ない。おむつを付けさせるため、とは言ってたけど本当にそれだけで済ませてくれるのかな。
「それじゃあ、みっちゃん。このアプリについてなんだけどね。」
「うん。」
目の前に、スマホをぶらぶらと見せつけられる。いっそこれを奪ってしまえば……とは思っても実行するわけにはいかない。
既に私に対して『ユウカが許可を貰わないとトイレで用を足せない』って命令がされていて、その効果はスマホが無くても消えたりしないだろう。
スマホを取られたからこれからはもうおしっこを許可してあげない、なんて言われたら本当におむつが手放せなってしまう。
「実は私もあんまり詳しいことが分かってるわけじゃないんだ。だからちょっと実験してみたくって。」
「実験?」
一体何をされるんだろう。
「そ、実験。ってわけで試してみるね。『みっちゃん、宙に浮かんで』。」
「ちょっと!! そんなの出来るわけないでしょ!!」
バンザイをしろって言われた時は勝手に身体が動いて両腕を掲げてしまった。けど、宙に浮かれても身体が動いたりはしないし当然だけれど身体が浮かび上がることもない。そりゃそうだ。空中に浮かぶだなんてどうやって実現できるわけがないんだから。
ひょっとしたら命令通りに浮こうとして跳ねまわったりするんじゃないか、ってことも少しは心配もした。けれど流石に不可能な命令は通らないようになってるのかな。
「駄目かぁ。昔に読んだマンガじゃあ催眠術にかかったキャラが空に浮けって言われたら実際に浮かんでたんだけどねぇ。」
「それってさ。そのキャラが元から空を飛べる設定だったってオチだったりしないよね?」
何にしても人間が宙に浮かぶことなんて不可能だ。
「まあね。流石にコレは最初から無理だと思ってる命令だったからいいんだけどね。」
「だったらなんでそんなことしたのよ。」
バーコードのことがあってからユウカの考えがまるで読めなくなってしまった。これまではそれなりに共感も出来てたんだけどなぁ。
「うん。このアプリでの命令がどのくらいまでなら実現出来るかってのを知りたかったんだよねー。」
「そんなの、わざわざ調べる意味なんてあるの?」
どこまで出来るか調べるってことはつまり、ギリギリ可能だけど無茶な命令をされるってこと?
「えー。でも何が出来るかは把握しておかないとまずくない? 例えば許可が無いとおしっこを出来ない、って命令はさ。おしっこを出したり我慢したりを自分の意思で出来るから命令として機能してるんだよね。」
それはそうだよね。私の意志でおしっこを我慢することが出来るから、それを無理やりさせられてるって感じになってるハズ。もしおしっこが溜まりすぎて物理的な限界を超えてしまったときにも我慢できるのかってのは分からないけど。
「だからね。自分の意思ではコントロールできない命令でも聞かせることが出来るのかってのが気になったんだ。さっきの『宙を浮く』だったら絶対に無理だけど、これが不可能でもない命令だったらどうなるかってのは知っておきたくない?」
「気にはなるけど……って、そんなことを言われたからちょっと気になったってだけで別に試して欲しいってわけじゃないからね?」
ユウカの表情を見る限り、絶対にこっちの願いは聞いてくれそうにない。
「じゃあね。こんなのはどうかな。『みっちゃん、自分のおっぱいを大きく成長させて』。」
「それだって無理に決まってるじゃない!」
いきなり何を言うかと思えば。本当にどんな思考回路してんのよ。
「えー、これもダメぇ?」
「当然でしょ。」
今回の命令も私には何の影響も無い。当然おっぱいのサイズは変わらず、身体だって自由に動かせるままだ。
「そりゃね、宙に浮かぶのは無理だって分かるよ。でもおっぱいのサイズだったらさ、生きていく間に変化していくものなんだからひょっとしたら実現できるかもって思わない?」
「どう考えたって不可能でしょ。最終的な大体おっぱいの大きさなんて生まれつき決まってるんじゃないの?」
豊胸のための運動とか食べ物とか、そう言うのもないわけじゃない。けど、最終的には遺伝が一番重要だと思ってる。
今の命令の場合、一番最悪なのは胸を大きくするためとか言って変な行動をとってしまうことだった。豊胸のための運動を始めるとかならまだマシだけれど、身体が勝手に豊胸手術を受けようとする可能性だって無かったわけじゃない。確実に胸を大きくするための現実的な手段はそれくらいしかないのだから。
でも反応が無かったってことはこれも不可能な命令だって判断されたんだよね。
「うんうん。なるほどね。分かった、じゃあこれならどうかな。生まれつきとか関係ないし、今からだって特定の条件を満たせば出来るようになることだからね。」
「……何をさせようと思ってるの?」
悪い予感しかしない。
「うん。『みっちゃん、母乳を出せるようになって。』」
「……ねえ、ユウカ。バカなの?」
当然だけれど命令に対する反応は何もない。
「もしその命令を受けてさ。私が母乳を出せるようになろうってことで勝手に赤ちゃんを作ろうとしたらユウカ責任取ってくれるの?」
この場合の現実的な実現方法は赤ちゃんを産んで母乳を出せるようになるってことだ。で、赤ちゃんを作るためにはその……男の人と、アレをする必要がある。身体が勝手に命令を実現しようとしたら男の人とアレをしようとした可能性だって考えられた。
初めてだってまだなのに、こんな目的のために私のを散らされたりしたらたまったものじゃない。
「え? あ、そっかぁ。セックスして赤ちゃん作れば母乳が出るようになるもんね。みっちゃん頭いい。」
「セッ……とにかくお願いだから、何かする前にもうちょっと考えて!!」
「あははは、ごめんごめん。」
なんでそんなに軽く答えられるのよ。どう見たってユウカは全く反省していない。
「まあでもある程度方向性は見えてきた? 空を飛ぶようなどうやっても実現できない命令は無理。身体そのものが勝手に変わるような命令も無理。この辺りははっきりしたよね。」
「そうね。一歩間違うと大惨事になってたかもしれないけどね。」
これで諦めてくれたならいいんだけど。
「ん~、今まで出して通ったのは行動に対する命令だったよね。となるとぉ、うん。こんなのだったらどうかな。」
「ちょっと待ってってば。先に内容を、っていうかそもそも変な命令なんてもうしなくていいって……」
「『みっちゃん、おしっこを出す時にオナニーをしている時の何倍も快感を感じるようになって。』」
……は?
「どう? 身体は変わらないわけだし、これだったら不可能じゃないんじゃないかな。」
「……ユウカ。何? 今の命令。」
「え? みっちゃん、オナニーって知らない?」
そうじゃない。っていうか、なんでそんな私が何を言ってるか分かりませんって表情してるの。
「それは……知ってる、けど。だからこそ、なんでそんな命令をしたのか聞きたいの。」
「うん。バンザイさせたりおしっこを我慢させたり、って命令は通ったよね。で、身体が変わっちゃうような命令は無理だった。後のバリエーションって言ったら感覚を変えるのとかくらいしか思いつかなかったから。どう? 効いてそう?」
「分かるわけないでしょ!!」
おしっこをした時の感覚? 今のところ何か変わった気はしない。けど許可を得ないとおしっこが出せなくなるって命令をされた時も同じだった。実際におしっこをしようとして初めて命令が有効だったって分かったんだ。
つまり、実際におしっこをしてみないと命令が効いているかどうかはわからないってこと。出来ればこれも無効ならいいんだけど……
「で、どうかな。最後におしっこをしてから結構経ってるよね? 体験も兼ねて一回おむつに出してみない?」